螺鈿迷宮/海堂尊

螺鈿迷宮 上 (角川文庫)

螺鈿迷宮 下 (角川文庫)

海堂尊初の田口・白鳥シリーズ以外の作品。…と思ったら、舞台は同じ桜宮で、白鳥も登場。シリーズの外伝的な位置付けのようです。

『ナイチンゲールの沈黙』でもちょっと登場した桜宮病院にまつわるストーリー。
不運な不良医大生・天馬大吉（名前はとても幸運そう）が、借金のカタに桜宮病院に潜入する任務を与えられて、そこから桜宮市の地域医療の暗黒面を見て…といった展開。
『ナイチンゲール〜』に続いて、とてもポエミィではあったのだけど、ミステリ要素の組み込み方は抜群で、序盤に組み込まれたいろいろな伏線が後半になって次々消化されていくのは非常に上手かった。
『チーム・バチスタ〜』と『ナイチンゲール』の両作品を読んできた人には「おお、この人がついに！」と思えるような人物も登場して、しかもそれがしっかり面白いキャラ立てされているのも○。

叙情的な文体は賛否両論ありそうです。さすがにエピローグの会話なんかは芝居がかりすぎてて非現実的だったからなぁ。海堂先生はこの作品をドキュメンタリーとかでなく、あくまで物語として書きたかったのかな、と勝手に予想。

桜宮サーガの一環として続きがありそうなエンディングの書かれ方をしていたので、成長した大吉クンを見られるのを今から楽しみにしています。あと、エンディングシーンはどちらが生き残ったか、難しいところですね。僕は小百合先生が生き残った派だけど、嫁さんはすみれ先生派でした。いずれにしろ、次回作で分かるのかな。なんとなく舞城王太郎の奈津川サーガのようだ（ネタバレにつき反転）。