硝子のハンマー (角川文庫)作者: 貴志祐介出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2007/10/11メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 53回この商品を含むブログ (95件) を見る

貴志祐介作品久々の文庫落ち
これもハードカバー版が発売されてから3年間、ずっと文庫落ちを期待していたのであります。


これまでの貴志作品とは打って変わって本格ミステリ。しかも難攻不落の密室殺人の謎を暴くというコテコテの密室モノ。
得意分野であるところのホラーやサスペンスとはカラーがあまりに違うので、果たして本当に面白いのか心配していたのですが…杞憂でした。面白かった!600ページという、ミステリとしてはかなり長い作品なのだけど、もともと読みやすい文体であることも手伝って長さをほとんど感じずに読むことができます。


前半・後半でパートが分かれていて、前半は事件の発生と探偵サイドの推理展開。後半は回想から始まるサスペンス風の回答編。…と、これだけ書くといわゆる本格ミステリ的手法に見えるのだけど、後半の物語展開が(ちょっと強引ながらも)かなり面白くて斬新。ちょっとした叙述的なミスリードなんかもあったりして、なかなか楽しめたのです。
前半の推理パートは、優秀ながらもちょっと天然な推理展開をする女性弁護士・青戸先生と、自称「防犯コンサルタント」の防犯グッズ屋・榎本の推理合戦がかなり楽しい。かなり色々なパターンを探偵達が喋ってしまうので、ちょっと冗長な気がしながらも、一つ一つ推理の内容を検証して不可能犯罪性を確立していくので読者に「どうやってこんな状況で殺人なんてできるのよ!?」と思わせるのは上手いです。


結局、トリックはちょっと反則気味ではあったので、ラストのカタルシスとしては若干弱かったのだけど、シリーズモノとして読みたくなるくらいに楽しむことはできました。超佳作。
とは言え、貴志先生は超遅筆として名高いので、このクオリティーの長編を読めるのはまた数年先か…と考えるとちょっと悲しい。