蹴りたい背中 (河出文庫)作者: 綿矢りさ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/04/05メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 127回この商品を含むブログ (134件) を見る

芥川賞受賞作品。
何と言うか…純文学はよく分からないと言うか、どうにも掴みにくいと思った。


『インストール』を読んだときも思ったのだけど、国語の教科書に載っているような作品。
主人公と、その友人「にな川」にフォーカスを当てて、起承転結のイベント毎に二人の心情の移り変わりを描いていて、「登場人物の気持ちが変化する瞬間」が凄く分かりやすいのだけど、その変化の内容がどうにも共感できなかった。主人公の性別が違うことと、主人公がちょっと変わり者(というか、ただの天邪鬼?)という設定なので、まあ共感するのは無理かもしれないけど、「え、なんでそこでそういう行動なの?」というシーンが多かった。
そのキャラクターの分かりにくさが、先の展開を予想させにくくて、最後までストーリーから目を離させないことに功を奏しているような気がする。


エンディングは賛否両論ありそうだけど、ストーリー全体の「蹴りたい背中」というテーマから考えるとあれが終わりであるのは上手い気がします。あそこで終わりにしないと、逆に今度はスッキリしたエンディングを書くには冗長になりすぎてしまいそうだし、ただの恋愛小説になってしまう。


相変わらず文章は読みやすくて綺麗です。最後まで一気に読めてしまう読みやすさ。
比喩なんかも、綺麗な表現だけど分かりにくくなくて良いです。


よく分からないながらも、それなりに楽しめた作品。
文庫版であれば値段も手頃なので、興味があれば読んでみて損はない作品。