リアルワールド/桐野夏生

リアルワールド (集英社文庫(日本))

リアルワールド (集英社文庫(日本))

久しぶりに桐野夏生。他にあまり読む本がなかったときに、適度なボリュームの文庫本があったので購入。


適当に選んだのでそんなに期待はしていなかったのだけど、思っていたよりも良かったです。10代の若い子達の焦燥や不安や達観が上手く書かれているなぁ。
って、この作品に登場するメインキャラクターは、主人公を除いて全員極端な個性を持っている*1ので、表面的にはリアリティーがないのだけど、心理描写なんかはとても上手くて、自分が高校生だった頃と比較してしまって色々と感じ入る場面が良かった。


特に、最終章のテラウチの独白はとても僕好みの文章でとても良いです。
舞城王太郎的な厭世観たっぷりのまくし立てるような文章で、心に残る。


ちなみに、メインキャラクター4人の内3人の個性を書き並べると、知能派・美少女・レズって感じ(主人公は割と普通の女子高生)で、萌えゲーかよ!みたいなツッコミを入れたくなるのですが、萌え要素は殆どないです。むしろどちらかというと凹みます。
ウチの嫁さんは読み終わってからしばらくは、暗い気分になっていたようで。


超オススメ作品ということはないけど、他に読む本がなくて困っているのであれば是非。

*1:一人称の群像劇なので、そういう個性を付けていた方が読者にとって物語が判りやすいのだと思う