ララピポ/奥田英朗

ララピポ

ララピポ

奥田英朗最新作。人生の負け組と作中でも評される6人について綴られる、群像劇風の短編集。


オビに「爆笑小説」とか書いてあるので伊良部シリーズのようなものを期待して買う人が「暗すぎて辛い」「爽やかさがなくてイマイチ」と感想を書いているのをmixiAmazonで見かけて、確かに明るい話は少ないし、救いのない話ばかりなのだけど、しっかり楽しむことができました。というか、個人的には伊良部シリーズよりもこちらの方が面白かった。


ちなみに、伊良部シリーズとこの作品は真逆の性質だとmixiAmazonでレビューを書いている人は思っているようなのだけど、そんなことはないと思った。作品としての本質は両シリーズ同じで、単に表現の仕方が真逆なだけ。
奥田作品の特徴として、登場人物の心理描写が長けているというのが挙げられて、伊良部シリーズなんかも、読者の背筋が寒くなるくらいの焦燥感がしっかりと描かれているのだけど、伊良部という破天荒なキャラクターが、その焦燥感を浄化する役割をしっかり持っている。『ララピポ』については、その焦燥感を浄化せず突き詰めるとどのようなことになるか、という部分に焦点を当てているので、伊良部シリーズを期待して読んだ人には上記した感想を持ってしまって、なんだか奥田作品の一番面白い(と個人的に思っている)部分を味わっていなくて、勿体無いなぁ、と感じました。
まあ本の読み方なんてものは人それぞれなので、別にこの作品の感想で低評価をしていることについて文句を言うつもりはないのだけど、出版社は「爆笑小説」という嘘をオビに書いて伊良部シリーズで奥田英朗を好きになった読者を騙してこの作品を買わせて幻滅させているのはさすがに酷い。もう少し、ちゃんと読者層を考えたコピーを考えないと、伊良部シリーズのファンを無くしてしまうよ。


ただ、嘘だらけのオビなのだけど、「紳士淑女のみなさまにはお薦めできません(作者)」という一文だけは真実で、エロ・グロ(特に精神的な)がちょっとでも苦手な人は楽しめません。『最悪』あたりのダークな奥田作品を「超面白かった!」と絶賛できるあたりの人にはオススメです。