クチュクチュバーン/吉村萬壱

クチュクチュバーン (文春文庫)

クチュクチュバーン (文春文庫)

文学界新人賞受賞作品を含む短中編集。

「巨大な塊がクチュクチュと身をよじらせて、バーンと爆発する」

とかいうワケのわからないフレーズが凄く気になって、コミカルな内容を想像しながら買ってみたものの、収録されている3作品とも、登場人物の悉く(名前のある主役級や脇役の登場人物に限らず、エキストラも含めて全員)が圧倒的な暴力によって根こそぎ殺されてしまって、とても気分が落ち込みます。


「圧倒的な暴力」って書いてしまうと、舞城王太郎的な表現っぽいのでなんとなく氏の作品を創造してしまう人もいるかもしれないかもしれませんが(でも多分そんな奇特な人はあまりいないと思う)、舞城王太郎の書く文章とは似て非なる残虐悪辣な文章でグッタリします*1


ちなみに、その「圧倒的な暴力」の内容は、

クチュクチュバーン
突然地球上で始まった急速な進化で、原型を留めた人間が誰一人残らなくなる。で、巨大な塊に飲まれて全滅。
国営巨大浴場の午後
突然地球に降ってきたナッパン星人によって人類がグチャグチャにされる。
人間離れ
突然地球に降ってきた緑色と藍色の宇宙人によって人間がミンチにされる。

というもので、どこを読んでもグログロで食傷気味。


久しぶりに悪い意味で毒の強い小説を読んでしまったのだけど、文章自体は力強くて、発想もブッ飛んでいるので、グロ描写に耐えられる人はとても楽しめるのではないかと思います。僕は暫くは別作品は読まなくていいや。

*1:舞城王太郎も残虐悪辣であることもよくあるのだけど、吉村萬壱のそれはもっと悪意の篭っているというか何と言うか。