しゃべれどもしゃべれども/佐藤多佳子

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

「喋るのが苦手な人々が、人情厚い落語家の元に弟子入りする」って、なんだか設定だけ見ると、とても奥田英朗の『イン・ザ・プール』のシリーズに似てるように思えるのですが、内容は全然違うものでした。
すごく面白かった。


何度か日記に書いているのですが、僕は家族モノに弱くて、たとえば『リトル・ダンサー』を初めて観たときは後半ずっとハンカチを離すことが出来なかったくらいなのですが、この作品が映像化されるとしたら*1、同じくらい号泣していたに違いないです。
正確には家族モノではないのですが、作中に登場する人達の繋がりは、むしろ家族よりも強いので、主人公が弟子(とはちょっと違うのだけども)の4人に対して感じる心情に対して、ものすごく共感できたり感動できたりするのです。


あと、主人公が本当に落語が好きだということが、文章からしっかり伝わってくるのもすごい。
一人称で書かれているので、そういう感情については書きやすいのかもしれないけれど、主人公の視点から見た、別の登場人物の感情なんかも、しっかりと読者に伝わるのが素晴らしいです。


まあ、全体的に割とご都合主義でありがちななストーリー展開だったりするのですが、しかも少しクサいセリフや文章が多かったりするのですが、そういうのに耐えられる人であれば絶対に楽ので是非オススメ。

*1:小説を読んですぐに「映像化」を言う人はとてもウザがられそうですが、この作品は是非映画で観たいくらい秀逸なシナリオだったのです