赤朽葉家の伝説/桜庭一樹

赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

数年前の新書版発売当時、評判がとても良くて文庫落ちが楽しみだった作品。
製鉄にまつわる鳥取の旧家の女三代の年代記。期待通り、なかなかの良作でした。


千里眼の才能で製鉄会社を支えるおばあちゃんの年代と、なぜか中国地方一のレディースヤンキーから漫画家に転身するおかあさんの年代と、主人公が語る現代の三部構成。それぞれの世代の話が、それぞれの時代の世相を反映した内容になっていて、物語としてしっかり面白い。面白いのに、現代編にたどり着いたら放り込まれるミステリ要素というのがまた上手くて(過去編で広げられた風呂敷がしっかり畳まれたと思わせる、納得の出来)、なかなか読み応えたっぷりの内容でした。
世代が近いからか、おかあさん年代の章が面白かった。下妻物語の世界だ。あと、『あいあん天使!』は確かに昔の少女マンガのタイトルセンスっぽくて笑える。


桜庭一樹ははじめて読んだのだけど、なかなか悪くない。ちょっと違うけど、以前加納朋子あたりを読んだときに感じたのと近い感覚。直木賞『私の男』とかも面白いのかな。