ハサミ男 (講談社文庫)作者: 殊能将之出版社/メーカー: 講談社発売日: 2002/08/09メディア: 文庫購入: 50人 クリック: 792回この商品を含むブログ (316件) を見る

ネットでの評判が非常に高い殊能先生の代表作。
色々なミステリ読みな人のサイトで大どんでん返し作品のお手本のように語られているので、期待して読んでみたのです。


主人公は巷で騒がれている殺人鬼「ハサミ男」。これから自分が手にかけようとしてる第三の犠牲者をストーキングするぜ!なシーンから物語開始。
いきなり「え?」と思わせられる超斬新な展開。「おいおい何だよそりゃ」と思って読み進めていると、更に斬新な本題に突入。


2001年に書かれたことを考えると、当時(=新本格派な人達が一通りの凄いトリックを出し終えて、いかに奇を衒ったトリックを作るか暗中模索している時節)は相当にショッキングな導入だったに違いない。他の作家も先を越された気分で悔しかったろうなぁ。


導入部を読んで「これは面白い!」と思った人は、そのまま最後まで読めるはず。
文章力とか構成力の地力は、殊能先生は新本格派な人達の中では悪くはない気がします。
で、オススメかそうでないかで言えば、間違いなくオススメな部類。
ただ、残念なことに導入の素晴らしさに対してオチが弱い。というかありがちなオチにまとまってしまったなぁ、という感想。
最近ミステリを好きになった人は絶対に楽しめますが、ある程度ミステリを読んできた人にとっては、若干冷めた視点で読んでしまうかもしれません。


あと、ストーリ全体にそれほど無理はなかったのだけど、一つケチをつけるとすれば、最初の被害者と第二の被害者の共通点はさすがに警察もマスコミも気付くんじゃないかな、と思った。そこまで無能ってことはないでしょう*1

*1:ミステリ作品中の警察は無能でなければならない、というメタミステリ思想でわざとそうしたのかもしれないけど