ROMMY/歌野晶午

ROMMY (講談社文庫)

ROMMY (講談社文庫)

三連続で結構面白かったので、またも歌野作品。
うーーーーーーん、面白かったのだけど、万人には薦められないような。


モロに一世代前のミステリといった雰囲気。
島田荘司に始まるいわゆる「新本格」の若手が、現代的な凄いトリックを出し尽くして、奇をてらった設定や叙述トリックを使い始めた頃の模索中の作品、といった匂いがプンプンします。
穿った読み方をしなければそれなりに楽しめるのだけど、ところどころに散見する本格推理のメソッドが作品全体の雰囲気をちぐはぐにしているような感じ。


ストーリーは、天才ボーカリストであるROMMYの半生記。
現在視点ではROMMYの死体が発見されるシーンから始まり、そこからROMMYの人間性を描いた過去回想が始まるという、まあいかにもな推理小説的な構成。
とは言え、用意された動機やストーリーの真相は結構凄い。「あーそうくるのか」と思わず関心してしまえる内容。しかもラストはちょっと感動系。
個人的には、作中の章節の間にある写真や略歴やインタビュー形式の記述が凝っていて良かったです。ROMMYというアーティストが実際に存在したかのように上手く書いていて、歌野晶午スゲーと思わせます。


ちょっと古臭い印象は否めないものの、本格推理好きであれば間違いなくオススメ。