煙か土か食い物/舞城王太郎

煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)

熊の場所』が面白かったので購入。舞城王太郎初の長編作品。


色々な意味で面白かった。
まず、文体。『熊の場所』ではかなりムチャクチャというか、「こんな変な文章の本は読んだことない」と驚嘆する文体だったのだけど、この作品については割と普通でした。ただ、とても下品。映像化したら間違いなく脚本からカットされる表現がいたるところにあって、酷かった*1です。1作の中でこれだけファックファック連呼してる小説は初めて読んだ。


あと、色々なジャンルの小説やマンガや映画のオマージュとしか思えないネタが、色々な箇所に散りばめられています。しかも若干誇張気味のパロディでやっているので、とてもそれぞれのテーマに対する皮肉に感じて、出版業界に敵を作るタイプ。
島田荘司風の本格ミステリなこじつけ有り、綾辻行人風の大掛かりな密室トリック有り、京極夏彦風のサブカルな屁理屈有り、馳星周風の暴力描写有り、バ格闘技映画風の格闘シーン有り、『ブラックジャック』風の医学的な描写有り、と、伊坂幸太郎を正方向ベクトルのミックスジャンルと呼ぶなら、舞城王太郎は負方向ベクトルのミックスジャンルだと思いました。


とりあえず、色々な要素を盛り沢山に詰め込んであるので、最初から最後まで飽きが来ません。
一見、他の本に比べてページ数が若干少なめに見えるのだけど、読点が少ない文体は健在なので、ボリュームとしては400ページ超の長編を読んだ気分になれます。
グロいのが嫌いでない方、パロディをパロディとして受け止められる方には是非オススメの一作。

*1:それでも『熊の場所』に収録されている『ピコーン!』よりはマシだと思える