オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

これは面白かった!
年末に本屋で見かけてちょっと気になっていたのですが、他に読んでみたい本があったので放置していたところ、ある感想サイトさんで大絶賛していたので、改めて期待して購入してみたら大当たりでした。


文章の運びというか構成が絶妙で、割と淡々とした文章ながらも、続きが気になって一気に最後まで読みたくなる面白さ。1つのテーマに沿ったショートストーリーの連続っぽく長編が進む構成(自分で書いていてよく解らない説明だけど、ホントにこういう話の進み方)で、場面がコロコロ変わるのだけど、それでも話や世界観に引き込まれるあたり、すごく良く出来ているなぁ、と関心します。


ストーリーに関しては、すごく面白いのだけど、背表紙のアオリ以上の情報を書くと面白くなくなってしまうので、触れないでおきます。読む気がある方は、前情報をあまり仕入れず、是非主人公の視点で楽しんでいただきたい。その方がこの本を堪能できるので。


ただ、前述したように、文章は淡々としているのと、独特の間があるので、この作者のペースがダメな人は徹底的にこの作品を嫌いそうです。マンガに例えるなら、あずまきよひこのペースが苦手な人がいて、あずまんが大王をケチョケチョに貶しているような人がいるような感じです。
僕はこの「間」とかも非常に気に入ったので、次回作にはすごく期待しています。我慢できずに新書版を買ってしまいそう。


(蛇足)
この作者の書く「悪役」が物凄いグロキャラでした。容姿の説明がグロい、とかでなく性格が。
例えば綾辻行人の書く殺人鬼や、バトルロワイアルの桐山なんかも、かなりグロ系のキャラではあるのだけど、むしろこの2者のような現実味のない黒さよりも、伊坂幸太郎の書く悪役は現実に存在していそうな、それでいて超絶なグロさを持ち合わせている、この手の小説では稀有なキャラでした。
こういう、読んでいてハラワタが煮えるような気分になるようなクソキャラを作れるあたりなんかも、作者は並外れた実力があるなぁ、と。