天帝妖狐/乙一

天帝妖狐 (集英社文庫)

天帝妖狐 (集英社文庫)

集英社の文庫第2弾。デビュー作をけなしておきながらも、やっぱりそれなりには面白かったのでまたも購入してしまった。


短編2作。ライトなホラーの『A MASKED BALL』と、本格ホラー+純文な雰囲気の『天帝妖狐』。両方とも全然違う文体で書かれている。この人はどんな作風でどんなありがちなテーマを書いても普通以上に面白いのが凄い。
『A MASKED BALL』は少年漫画的なノリで書かれていて、内容やオチもありがちな話だったけど、勢いがあって面白かった。伏線の張り方が上手くて、2回目に読んでも楽しめるのがいい感じ。
表題作の方は『人間失格』のような文体で淡々と話が進んでいって、このテの話が好きな人にはたまらないんだろうなぁ、と思う。基本的に終盤まで黒い内容だけど、最後でホロリとしてしまった。『レオン』を思い出す。


本の解説で「『乙』が苗字で『一』が名前なのか、『乙一』で一つの名前なのかわからない」と書いてあって、全く同感だったのだけど、著作リストには「乙 一作品」と、妙な位置にスペースがあったので、やっぱり前者なのではないかと思いました。