砂漠/伊坂幸太郎

砂漠 (新潮文庫)

砂漠 (新潮文庫)

久々に伊坂幸太郎長編の文庫落ち
裏表紙の紹介文だけ見て「超能力を持った大学生が能力を駆使して砂漠に雪を降らせる話」と勝手に勘違いしていて、中身を読んだら全然違った。実際には超能力を持ったのは一人しかいませんでした、と。…超能力?


前置きはさておき、凄く良かったです。個人的には『重力ピエロ』や『週末のフール』に次いで好きかも。
上に書いた作品はどちらかというと「家族の絆」を主題にしていて、この本は「友達の絆」がテーマ。個性がばらばらな5人が、ちゃんと心が繋がっている描写が凄く上手い。ありきたりな言葉を書き並べたりするのではなくて、それぞれのシーンで各キャラクターの行動や言動でその絆が分かるというのが素晴らしい。超能力はあくまでもストーリーに若干の味付けする程度にしか使わなかったのも好感度高いです。


主人公の決め台詞(?)、「なんてことは、まるでない」の使いどころも上手くて、ちゃんと物語のオチにも使っているのは、さすが伊坂幸太郎だと思った。あざとい。


これで「大学時代は楽しくて良かったなぁ」と思うのは物語ラストの台詞に反するのだけど、主人公達のユルさを見てるとやっぱり昔を回顧せざるを得ない。砂漠で生きるのは、とても大変なのだよ。