さまよう刃/東野圭吾

さまよう刃 (角川文庫)

さまよう刃 (角川文庫)

東野圭吾の最近の作品はテーマが重くて憂鬱になることが多いからここ最近は敬遠していたのだけど、この作品は凄く評判が良いので文庫落ちを期待して購入。


テーマの重さは

長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躙された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復習に乗り出した

という文庫裏表紙のアオリがすべてを物語っていて、読んでいてとても苦しかった。
『秘密』もそうだったけど、実際に自分の子供が作品内の子供と同じ年齢くらいになってから読んだら思うところは更に違うと思うのです。

序盤100ページの、娘を待つ主人公の苦しみや、偶然犯人グループの犯行現場を抑えたときの憎しみを描くシーンが強烈で、物語がどこに収束するかが気になってかなり一気にラストまで読んでしまいました。
途中ちょっと説教臭くて冗長な箇所もあるのだけど、ラストシーンの舞台に役者が揃っていく様は手に汗握る展開で本当に上手い。「さすが東野圭吾」と思わせる仕事。
物語のラストとしては無難なところに着地させた感はあったけど、それを押し付けがましく「救済」とせずあえて淡白に書いていたのは、読者に考える余地を与えていて良かった。


この作品を読んで思い出してしまうのが、光市の事件で、今年の4月にこの作品が文庫落ちしてたらもっと話題になっていたのだろうけど、やっぱり色々と問題あって出版できなかったんだろうなぁ。


あと、すんげぇどうでも良い話なのだけどこの作品のタイトルを見て思い出してしまうのが、

こいつです。全然名前違うのに!