ZOO/乙一

ZOO

ZOO

まだ文庫化されていない短編集。
一冊の本としての完成度を見てしまうと、それぞれの作品に共通のテーマがあるワケではなく、これまで書き溜められた作品を単に寄せ集めただけなのだけど、それぞれの作品のレベルは押し並べて高くて、とても満足できる本。


乙一が大得意な、「日常と紙一枚隔てた、現実的だけど異常な世界設定」と、その設定を存分に活かした描写がしっかりとされていて、どの作品も一旦読み始めると一気に最後まで読んでしまいたくなるような出来。
それだけでも乙一ファンとしては十分に面白いのだけど、白乙一作品でたまに感じる、「グッと心を掴まれるような感覚」が、色々な作品に散りばめられていて、大満足できます。
ちなみに舞台設定は黒乙一的な趣味の悪いものも多くて、軽く鬱になりますが。


個人的には、『SO-far そ・ふぁー』が超面白かった。
「なんじゃそりゃ!」と思わせる基本設定*1なのだけど、用意されているオチが更に意表を突いていて、物凄く印象に残るのです。


あと、『落ちる飛行機の中で』が、作品としてはかなりふざけていて、とても一般誌で公開できるような作品ではない(この作品は書き下ろし)のだけど、かなり笑わせてもらいました。こういう遊び心もしっかり持っているのがたまらなく好きです。
この作品、舞台でやっていたらしいけど、よくこんなのやる気になったなぁ。ちょっと観てみたいです。

*1:どういう設定なのかは、公式サイトのトレイラーで見てみてください。絶対に惹かれるので。